2010/5/3プチ旅気分のワイナリー紀行 〜勝沼編〜
それまでの不安定なお天気がうそのように晴天続きだった今年のGW。
皆さんはどのようにお過ごしでしたか?
30度を超す地域もあった5月3日に、日本ワインの代表産地「勝沼」を訪ねてきました。
養老弐年(718年)、諸国行脚をしていた僧行基により葡萄の栽培法がこの地に伝えられて以来、ここ勝沼は甘くかぐわしい香りの里となりました。
私が初めて勝沼を訪れたのは、かれこれ20年以上前の事。
当時と変わらず、一面に広がるぶどう畑の小高い丘のてっぺんに、市のシンボル「ぶどうの丘」は存在していたけれど、でも、確かに、あの頃と勝沼は変わっていたのです。
それは・・・そう、この場所で、この丘でぶどう栽培を営む皆さんが、そしてそのぶどうでワインを造る醸造人が、甲州ワインを単なる甘口ワインで終わらせず、世界に比するワインに仕立てるべく日々努力を重ねている事。そしてそれが確かに結果となって現れている事。
ワイナリーや畑の規模の違いはあっても、先代が築いてきた確固たる歴史の上に、次世代の担い手達が国内外で学んだ手法を駆使して、勝沼のテロワールと造り手の個性が反映されたワインを次々と誕生させています。
ワイン評価は、その道の方にお任せして、私流のワイナリー巡りは、勝沼の畑を歩き、勝沼の空気を吸って、名所にも立ち寄るという観光型。
変化を遂げているワイナリーでの試飲を楽しみに、全行程をテクテクと歩いてみました。
スタートはこの駅から・・
JR特急「かいじ」で「勝沼ぶどう郷」下車
正式名称は、山梨県甲州市勝沼です!
駅を出ると20年前と変わらぬ「ぶどうの丘」が・・・
これから、どんどん緑一面の風景に変わりますよ
まずは、ちょっとマニアックな所に寄りましょう。
「大日影トンネル遊歩道」 オススメデス!
駅を出たら表示に従って徒歩数分。
明治36年に中央本線八王子〜甲府間が開通してからは、それまで馬の背に載せ3日から6日かかっていたぶどうの出荷が、わずか半日で大量にできるようになりました。
レンガを使ったトンネルの技術は、ワイン貯蔵庫の建設に応用されたり、鉄道を使って観光団を誘致するなど、鉄道が地域にもたらした影響は大きかったようです。
平成9年廃線となりましたが、
現在も現役トンネルと並んで
堂々とした偉容です。
全長1367.80m
この先には「トンネルワインカーブ」が。保管料はかかりますが、ワインの熟成に最適な環境で大切なワインを預けるのもちょっと自慢!!
保線作業員のための「待避所」が36箇所あるそうですが、それを利用した説明板や木製ベンチが設けられています。
レールや黒い煤(すす)まで当時のままのトンネル歩きを経験して満足、満足!
そしていよいよ「ぶどう郷遊歩道」テクテク歩きの始まりです。
でも、早くもここで問題発生!?
え〜ん、誰も歩いていないよ〜
車はブンブン通るけど、これって遊歩道じゃないよね?
どこに、あるの?遊歩道の入口は・・・
あ〜っ、人発見!「すみませ〜ん、ぶどう郷遊歩道へは・・・」
ワンちゃんのお散歩中の親切なその方曰く、
「えっ!歩くの?」「ずいぶんかかるよ〜歩いて行った事ないけど」
ガ〜ン、私って無謀?でも観光地図に載っているよねえ・・・?
どうにも噛み合わない会話を終えて、自力で遊歩道への道を探し
(でも正確には、人様の畑に無断侵入)何とかルート確保に成功!
そしてぶどう畑から見た勝沼は
はるか眼下にありました。
つまり、ここって、すごい斜面なのね〜
こんな、足場の悪いところで、昔から
葡萄栽培に取り組んでいた事に心から感動しました。
畏敬の念すら覚えます。
これも、歩いてみて初めてわかった事です。
「百聞は一見にしかず」昔の人の言う通りでした。
さて、お昼近くなると、ますます強くなる陽射し。
でも、これこそが糖度の高いぶどうを育てるのだよね、
普段なら「日に焼ける〜」とバリヤー張るのに、この日ばかりは自分もぶどうのつもりで、いっぱい太陽浴びました。
「ぶどう郷遊歩道」には、ところどころ
こんな看板がありますから
大丈夫、迷うことなく(出だしはつまずいたけど)歩けます。
でも、かなりの斜面もあるので足元はヒール厳禁!
あっ!こんな看板ありました。以前から、中央高速から気になっていた鳥居形の事かしら・・・・・
ハイ、ここでは10月第一週に行われる「ぶどう祭り」の夜に、積み上げられた護摩木に火が点けられます。鎌倉時代に害虫駆除から始まった伝統行事です。そして、ここ一帯は、有数のぶどう畑「鳥居平」として有名です。
さて、次なる目的地「大善寺」を目指します。
看板見て驚きました。
何と「ぶどう薬師」と書かれているではありませんか!?
こここそ、勝沼に
ぶどう栽培をもたらした僧行基が、夢に現れた右手に葡萄、左手で結印した薬師如来と日光・月光菩薩を刻み安置したお寺です。
さすがはぶどう寺。
山門の脇には手入れされたぶどう棚が!
そうです。何とここでは、
ワインが飲めて!買える!のです〜!
何でも、ご住職自ら搾っておられるとか・・・
いやはや、参りました。
ちなみに、お庭を見ながら
グラスワイン300円也 頂きました(合掌)
「大善寺」を後にしてテクテク歩きは続きます。 途中、こんな橋があったり、先程通った 「鳥居平」が見渡せたり・・・
でも、やはり、どこまで行ってもぶどう、ぶどう、ぶどう畑・・・でした!
ぶどう狩りの季節には、きっと渋滞するんだろうな〜と
思いながら、一台の車も通らない道を歩いて向かう先は
今回の大きな目的のひとつ、
「変貌をとげる勝沼ワインの現状に迫る」 な〜んてネ、
単純にワイナリー訪問 → お話伺う → 試飲 → 購入
っていうだけでした。大袈裟でスミマセン。
まずは、こちら「ダイヤモンド酒造」さん。
もともとは組合が運営する酒造でしたが現在は雨宮壮一郎さんが全株を取得して独自の経営を行っています。
雨宮さんは勝沼ワイナリークラブの初代会長さん。
そして、「変貌をとげる・・・」の代表選手が、こちらの後継者である 雨宮吉男さんです。
吉男さんはボルドーとブルゴーニュで栽培・醸造を学び帰国後はさまざまな事にチャレンジをして、従来と異なるスタイルのワインを造り出していらっしゃいます。
この日、吉男さんは畑に出ていて不在でしたが代わりにいろいろお話を聞かせて下さったのは、お母様。
次から次と嬉しそうに、ワインを注いで下さいました。
この時点で、本日の私の目的「変貌をとげた勝沼を探る」は、早くも検証終了!あとは、ワイナリーの縁の下の力持ちであるお母様ならではのお話を聞きながら、既に、ほろ酔い。。。
味わいについては、様々な方のブログや、酒販店さんのHPにたっぷり紹介されていますので私のへたな解説は割愛させていただきます(ペコリ)でも、これだけは大きな声で言いたいのです。それは、吉男さんがひたすらワイン造りに没頭できのはお父様の築いた基礎と、お母様の愛情があってこそということです。
訪問者を暖かく迎えて、一生懸命説明して下さるお母様。社長であるにもかかわらず、在庫管理や発送も担当しているお父様の姿に、まさに家族経営の真髄を見た気がしました。
さて、名残は尽きませんが、そのままいたらすべてのワインを飲みそうだったので、次なる検証場所「山梨ワイン」へ向かいます。
こちらは大正2年よりワイン造りをなさっている老舗です。一瞬、ワイナリー?と思うような品格ある古民家は、以前の母屋とか。蚕室を利用した建物もありましたよ。
きれいに手入れされた土間を通ると、その奥に木をふんだんに使ったシックな試飲室とワイン醸造の歴史がわかる資料室がありました。
おやおや、先客をご案内中の方は、これまたお家の品格にぴったりなジェントルマン。
その方こそ、三代目野沢貞彦社長でございました。
日本のワインといえば、「大量生産で甘い」イメージもあるかもしれませんが、ナイアガラ、デラウェア、ピオーネなどを使った、葡萄の風味が生きた果実味あふれるワイン造りには、野沢家のこだわりを感じます。
そして、また、ここにも優秀な次世代が・・・
4代目になるたかひこさんは、ブルゴーニュ地方ボーヌ市のブドウ栽培ワイン醸造学校を卒業後、勝沼に帰って「七俵地畑」という自社畑を中心にカベルネソーヴィニヨンやシャルドネを垣根仕立てで栽培しています。
ワイン熟成においてはフランストロンセ産オーク樽を中心にした樽熟成も行われそれらは、瓶に移された後、先代達が苦労して手で掘った石造りの地下貯蔵庫でじっくりと熟成されます。
GW中でもあり、ひっきりなしに訪れるお客様を丁寧に案内する野沢社長。
そして、たかひこさんはといえば・・・これまたダイヤモンド酒造 雨宮吉男さんと同じく自社畑で、ひたすらぶどうと向かい合っておりました。
ここでもまた、勝沼に脈々と続く「ワイン醸造の熱きDNAの継承」そして「家族の絆」を感じた次第です。
さて、私のテクテク歩きも終盤近くなりました。
駅に続く道の途中には、こんな大規模なワイナリーも。さすがは勝沼です。
←シャトー勝沼
何度訪れても、誰と訪れても間違いなく楽しめますね。
夕暮れ迫る勝沼では、まだまだ畑作業に精出す人が・・・・下草取りでしょうか・・・
世の中の日曜日も連休も、早朝も深夜もこの方達には関係ない。
関係あるのは長年培った経験から聞こえてくる 「ぶどうの声」。ぶどう達が「こうして欲しい」と思っている「お願いの言葉」・・それだけ・・・
深い感動の場面でした。
今回のテクテク歩きでは普段ワインの名称かエチケットでしか見かけないこんな「住所」表記も、見かけました。
歩いたからこそ、わかった事や発見、感動もあったのですが歩くのが大変〜という方にはこんなバスもありますよ。一周約1時間の「ぶどうコース」と「ワインコース」があります。
ついでに、駅前には、ちゃんとタクシーも。
ぶどうの里に染みわたる、お寺の鐘を聞きながら
新宿行特急を待つホームで今日一日を思い返してみました。
ブドウ畑があんなに急斜面だったなんて・・・
ひたすら、自分らしいワイン造りに没頭する人がいました。
それを見守る家族がいました。
ブドウ栽培に携わる人、醸造する人、影で支える人、
誰一人欠けても、この味はできないんだね。
そして誰もがみんな尊敬しあっているんだね。
今日の勝沼「ぶどう郷遊歩道」テクテク歩き。
約10キロ 6時間の旅でした。
今日のみどころ
@ 大日影トンネル遊歩道
http://www16.ocn.ne.jp/~e_kouiki/oohikage/oohikage.html
A 大善寺
http://www.katsunuma.ne.jp/~daizenji/
B ダイヤモンド酒造
http://www.jade.dti.ne.jp/~chanter/
C 山梨ワイン
http://www.yamanashiwine.co.jp/
D 甲州市観光協会
http://www.koshu-kankou.jp/
日本のワイナリーからの贈り物
j-winery.jp